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《ETAJIMA Fan Info》
継承される能美島・江田島の文化と歴史
島のお寺で365日欠かさず行われる朝のおつとめ
「常朝事(じょうあさじ)」ってご存知ですか。
文字通り一年間365日、毎日欠かさず、お寺でご住職とご門徒による朝のおつとめ=「お朝事(おあさじ)」を行なうことです。
江田島市(能美島・江田島)のほとんどのお寺では、なんと、この「常朝事」が約200年にもわたり現在まで続いています。
島の「常朝事」の歴史は江戸時代、天保の頃にさかのぼります。
戦国武将の福島正則が関が原の戦いの後、安芸の国に入り寺院統制を行なった結果、安芸の国では浄土真宗(西本願寺派)が大きく広まりました。江田島・能美島では、江戸時代中期から後期にかけて広まり、現在の島の多くのお寺はその時に建立されたと言われています。
(それまでは、江田島・能美島には密教(真言宗)のお寺しか無かったそうです。)
そして、現在の沖美町の専念寺・徳正寺・長徳寺などが「常朝事」を始め、能美島全土、江田島全土に広がったものが現在まで受け継がれているようです。
今回、いつもより少し早起きをして、いくつかのお寺の朝のおつとめに参加してみました。
夜が明ける朝7時前(夏季は6時半のお寺が多いです)、ポツリポツリと人が集まります。
カーンカンカンカンカン・・・朝の澄んだ空気に鐘の音が響きます。
ご住職が鐘を打ち終わると、おつとめがはじまります。
それぞれのお寺によって多少異なりますが、『正信偈(しょうしんげ)』や『讃仏偈(さんぶつげ)』などを読経します。
本堂、そして境内に読経が響きわたり、なんとも言えない厳かで神秘的な雰囲気です。
読経が終わるとご住職の法話になります。日頃のニュースや地域のお話を交えながら親鸞聖人の教えを説かれるご住職や、経典を紐解いて勉強会のようなスタイルでお話されるご住職など様々です。
読経が終わるとご住職の法話になります。日頃のニュースや地域のお話を交えながら親鸞聖人の教えを説かれるご住職や、経典を紐解いて勉強会のようなスタイルでお話されるご住職など様々です。
法話が終わると、おつとめは終了です。それぞれの1日が始まります。毎日繰り返される風景、これが島のお寺の「常朝事」です。
本記事の取材で、あるお寺のおつとめに参加した際、「実際、毎日どれくらいの方が集うのですか」とご住職にお伺いしてみました。
昭和の頃と比べると半数以下になったそうです。しかし今でも、少ない時で3名くらい、多い時は20名以上の方がお参りされるそうです。
「おつとめにおいでになられる方は年々減っておりますが、伝統は繋げていきたいですね。
どなたでもおいでになられるのをお待ちしております」とご住職からのお言葉。
集われる門徒さんも優しく、初参加の私に「ここから読むけんね~」などと親切に教えてくださいました。
今までお寺でのおつとめをしたことのない私からすると“非日常”的な体験でしたが、これが島のお寺では200年以上続く“日常”だと知り、大変な驚きを感じたのと同時に、心が温まった取材でした。
人々の“心のよりどころ”としての寺、そして地域の伝統や歴史の伝承者としてのお寺。
そこで毎日行なわれる朝のおつとめ。
守っていきたい島の大切な文化だと思いました。