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《ETAJIMA Fan Info》
昭和62年3月に設立。1階が大柿地区歴史資料館。2階は大柿町出身の政治家・灘尾弘吉(なだおひろきち)氏の蔵書,関係写真を展示しています。
近年では,生誕150周年記念の六角紫水展(平成29年),海軍兵学校江田島移転130周年記念地域交流事業の海上自衛隊第1術科学校教育参考館特別展,タイムカプセル開封記念の灘尾弘吉展(いずれも平成30年)を開催。平成30年度の来場者数は2,000人を超え,市外,県外からも人気の,江田島市の学習施設です。
年末年始と月曜日,祝日以外は開館日。職員の方に,館内の展示についてお話をうかがいました。
1階受付では,館内の古文書を現代文に直した冊子を頒布しています。
年1回のペースで発行される冊子は11冊の既刊があり,歴史好きの方に好評。在庫が残っているものは受付に並んでいます。
この大柿地区歴史資料館では,古文書や土器,継承された数多くの文化財ほか,貴重な資料が見られます。
(展示物は定期的に入れ替えがあり,写真にあるのは取材時のものです)
文政2年(1819年)の柿浦村(後の大柿町柿浦)。
楠田など,バス停の地名でもおなじみの場所が確認できます。
平安時代以来,食物を盛って他の所へ運ぶために使われていた「行器/外居(ほかい)」。
このあたりでは「負荷(ほっかい)」と呼ばれていました。
銘々膳(めいめいぜん)とも呼ばれた,ひとりひとりの食器を収納する「箱膳(はこぜん)」。
昭和10年ぐらいまで日本の食卓で普通に用いられていました。
能美城跡などの近くで出土した,中世のものとみられる土器も展示しています。
下の写真の「大原12景の発句」は,広島の俳人12人による大原12景の句を新宮八幡宮に奉納したものです。
芭蕉(ばしょう)の門人を師とした大原出身の閑考庵雨丹(かんこあんうたん)は,芸備の友人らと頻繁に俳句会を催しました。俳句をたしなむ文化が根づいたこと,そして当時の盛況ぶりが伝わる資料です。
また,大柿町出身で漆工(しっこう)のパイオニア・六角紫水(ろっかくしすい)の作品やパネルも充実しています。
過去に出版された広島県立美術館の図録のほか,コミックス「ゼロ THE MAN OF THE CREATION」(集英社/原作:愛英史(あいえいし),絵:里見桂(さとみけい))に六角紫水が取りあげられた巻も展示。選りすぐりの,幅広いジャンルから資料が揃っています。
続いて2階の,江田島市灘尾記念文庫。階段を上がった先に見えるのは,灘尾氏の写真に略年譜と,
ジュネーブ国際労働会議洋行時の鞄です。平成18年に江田島市を訪れた,西洋アンティーク評論家・鑑定士で知られる岩崎紘昌(いわさきひろまさ)氏によると100万円の価値があるとのこと!使い込まれた様子は経年の劣化と相まって,その時代の空気もまとっているように感じられます。
灘尾氏は東京帝国大学卒業後,内務省に入省。41歳で大分県知事,後に広島県知事の勧めで衆議院議員に立候補。連続12期31年にわたり衆議院議員に在職し,その間に文部大臣,厚生大臣,広島県から初めて誕生した衆議院議長などの要職を歴任。国政の発展,国民の福祉の安定に努めました。
灘尾記念文庫は,このような多くの偉業を成した灘尾氏が長年所蔵,愛読した書籍を直接手に取り,読むことができる場所です。
1972年,田中角栄(たなかかくえい)首相の日中国交正常化で,日本が台湾と国交断絶した後に,灘尾氏は自民党内で親台湾派の中心的存在として日華交流の窓口になりました。蒋介石(しょうかいせき)総統との会談を経て,以降も台湾を何度も訪問し,両国の関係を維持しました。日本に数点しかない国立故宮博物院からの寄贈図書,1~120巻が展示されています。
パネルとともに,愛読書や使用していた教科書なども見られます。
児童図書,美術書など多くの図書が貸出可です。また,持ち出し禁止の本はここで読むことができます。郷土資料も充実しており,平家の落武者伝説を調べに来られた方もあったそうです。
本土側の呉と江田島をつなぐ早瀬大橋は,昭和48年に開通しました。
足掛け10年に及ぶ早瀬大橋架橋事業は,広島県が国庫補助によって行ったもので,最終ブロックの閉合式では,日本初の金のボルトを使用。島民47,000人の長年の願望であった本土直結が実現したのです。
ドッキングの際のボルトと,開通式テープカットのハサミが展示されています。
水不足に悩む安芸灘諸島に,初めて広島市の太田川から給水した広島用水事業の創設と並び,この早瀬大橋架橋もまた,郷土発展のために灘尾氏が大きく貢献しました。
2階では,平成30年に広島市で行われた灘尾氏の顕彰像建立記念タイムカプセル開封記念行事の様子や,足跡をたどる映像ソフトが視聴できます。
同じフロアには,1階で頒布されている翻字(古文書を現代文に直したもの)冊子の全既刊を展示。
また,古文書を解読する「江田島市翻字の会」は,歴史資料館の展示物を後世に伝えていく有志の集まりで,月に1回,メンバーが,この資料館で研修をされています。年1回の刊行ペースで,今までに編纂した本は11冊。平成24年には,長寿社会における高齢者の社会参加活動の模範として,内閣府特命担当大臣表彰を受賞しました。
バス停,国道も近く,アクセス良好のこの地で,大柿町の歴史にふれてみてはいかがでしょうか。
また,この夏も,海上自衛隊第1術科学校教育参考館の特別展が開催されます。こちらもどうぞお楽しみに!
【基本情報】大柿地区歴史資料館・江田島市灘尾記念文庫
住所:〒737-2213 江田島市大柿町大原1丁目1068-6
電話番号:0823-57-6420
開館時間: 9:00~17:00
休館日:月曜日・祝日・年末年始(※特別展準備のため,2019年7月14日(日)~19日(金)まで休館)
アクセス:国道487号線沿い,江田島バス「大柿老人福祉センター」バス停から徒歩約3分
駐車場:資料館隣の駐車場に普通車で10台程度可
公共交通利用の場合,資料館へは,江田島バス「大柿老人福祉センター」バス停から,青の案内標識を目印に進みます。(写真下の長坂建材前と,ホームセンタージュンテンドー側にバス停あり)
青の案内標識からローソン側の右方向,細い道に入るとすぐに,灘尾弘吉胸像が見えます。
道路を隔てて資料館向かい側に駐車場があります。普通車で10台程度可です。
(2019年5月取材)