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《ETAJIMA Fan Info》
江田島町小用港から徒歩約10分。住宅街の中ほどに位置する「もみの木」。開店してから11年になる。
笑顔が素敵な店主の木村さん。そのショーケースには、ずらり並んだ焼きたてのパン。
朝6時には店を開ける。立ち寄るお客さんが焼きたてパンを買い、通勤通学のおともにできる。そんなちょっとした贅沢が、この江田島にはある。
※注)2020年1月6日から、営業開始時間が朝8時からとなります。また、年末年始の営業については、2019年12月25日が休み、年内は31日まで営業します。2020年1月は、1月1日~5日までが休み、6日から営業開始です。
「市外から来られる方は特に、(値札を見て)安いと言われますね」と語る木村さん。平成から令和になって今までに、20円くらいは上がっていると思うが、あまり変わらないのだそう。
「材料費のことを考えると値上げしたいが、タイミングがわからない」と笑う。
取材に訪れたこの日も、次から次へと、なじみの常連さんが来られては、お目当てのパンを買っていかれる。撮影時には在庫があったカレーパンも、昼食どきを待たずに品切れとなった。
それでは注目のラインナップを見ていこう。
ショーケース上のバスケットでまず目を引くのは、遊び心たっぷりの名前がついた「ぴざピザ」。
写真左はチリソース。右は、ちりめんじゃこを使ったピザパン。おつまみとしても人気がある。
定番のラスクは、お得がいっぱい。チーズフランス、ごまパン、くるみパンなど、一袋でいろんな味が楽しめるのは、もみの木ならでは。
ショーケース中段の食パンは、白い食パン、山型食パン、牛乳食パンの3種類で展開。
普通の食パンでは耳の部分が噛みにくい高齢の方でも、この白い食パンなら全部食べられると好評だ。
この牛乳食パンは水を一切使わず、水分は牛乳だけの贅沢さ。食パンとは違う形にしたかったので、金型を使ってドット柄の筒形にした。発酵時間と型抜きに手間がかかるのだそう。
ちなみに、おすすめをたずねてみると「全部!」と木村さん。その中でも、あんパン、クリームパン、新製品のフォカッチャが推しパンだ。
右は、白ごまがのった、つぶあんパン。左は、梅がついた、こしあんパン。
やさしい甘さのこしあんと、濃厚な味わいのつぶあん。このつぶあんの深い甘さは独特で、隠し味なしの砂糖だけで仕上げていることに驚かされる。おすすめかつ人気商品なのも納得だ。
実は、もみの木のパンは、あんこ、クリームは自家製。そして添加物を使っていない。
店内にあるボードには、材料が書かれている。
最初、使っていた粉は外国産だった。仕入れの業者さんから、国産の粉はどうかと勧められたら、これが良かった。今は岡山産の小麦「ゆめちから」を使っている。また、仕入れ業者さんとのやり取りで、藻塩を入れ始めたら、パンの作りがしっかりしてきた。そして今に至っている。
木村さんは、「もみの木」を始める前から自宅で、子供たちが小さいころからパンを、趣味で作って焼いていた。子供たちが「お母さん、おいしいね!」と言ってくれるのが嬉しかった。当時は、テーブルロール、バターロールの2種類だった。
開業のきっかけは、木村さんが市内の福祉施設に勤務していた時のこと。調理の部署に配属となり、料理の上手い人と出会った。また、あんこを炊ける人もいて、学ぶことが多かった。その人たちの影響が大きかった。後に木村さんは、調理師の免許も取り、そこで本格的にパン作りをやってみようかと、店をオープンさせた。
なるほど、もみの木の、あんパンのあんが、他と違う魅力があるのは、これらの経験が生かされていた。
開店当時のラインナップは、山型食パン、牛乳食パン、あんパン(つぶあん)、クリームパン、サンライズだった。
あんパンは、つぶあんだけだったが、「こしあんもいいよ」と周りからリクエストがあり、作るようになった。
次の推しパンは、クリームパン。
素材の味わいたっぷりの絶品クリーム。この、ふわとろ感が、おわかりいただけるだろうか。
チーズフランスは、パンを割ったところから、ごろごろチーズが出てくる。チーズ好きにはたまらない逸品だ。
チーズをこんなに詰めていいのかと、心配になってしまうほどの入れようだ。
ゆめちからと藻塩でつくられた生地とも相性抜群。パンってこんなにおいしいものだったのかと唸らされる。
明太フランス、バジルフランスは近所の人から「明太食べたい」「バジルいれたらおいしいよね」のリクエストに応え、以降のラインナップに加わった。
身近なお客さんが、もみの木のパンのおいしさを知っている。だからこそ、その生地によく合う組み合わせがリクエストになり、商品が生まれる。自分の好きなパンがお店に並び、買える。まさに夢のようなパン屋さんだ。
木村さんが趣味でパンを作っていたころは、お子さんが一番のファンだった。そして今は、お客さんからのリクエストや励ましが、新しいパンを作る原動力になっている。
今秋からの推しパンは新商品の、フォカッチャ。えたじまぐるっとオリーブラリーの対象商品だ。
オリーブオイルをふんだんに使ったフォカッチャは、奥から順に、ローズマリー、バジル、オレガノの、3種類のハーブで揃えた。このハーブは、倉橋島、江田島でハーブとオリーブの栽培を行っているIsolaEssentials(イソラ・エッセンシャルズ)のものを使用。
それぞれのハーブが良いアクセントとなっているので、もみの木来店の際にはぜひ、3種制覇で食べ比べていただきたい。オリーブとハーブともに、江田島の恵みが堪能できる。
ショーケース中段、下段のなかでは、シナモンデニやサンライズも見逃せない。
さくっと食感に大人のほろ苦さが広がるシナモンデニは、ティータイムによく合う。
「シナモンは毛細血管が元気になるからね」と木村さん。味だけでなく、健康面にも配慮されている。
2種類のサンライズ。左のレモン味は、江田島産レモンの皮をすりつぶして入れた、さわやかな風味。右は、香りのいいモカ味。
もみの木のパンは、実店舗以外にも、イベントなどでの出張販売がある。今年の4月末に、能美市民センターで開催された江田島グルメまつりで、このサンライズが登場。好評を博した。
また、11月中旬に国立江田島青少年交流の家で毎年開催されるイベント・フェスティバル江田島でも、すっかりおなじみの出店だ。
写真手前で、食パンのそばにいるのが木村さん。この日に焼いてきたパンは昼前に完売の人気ぶりだ。
(フェスティバル江田島では、写真のように石田スポーツ店との合同出店)
もみの木は週2回、市内への移動販売も行っている。実際にお店に来られた方の口コミ、評判、知り合いから配達先が広がっている。子育て中のお母さんや高齢者など、買い物に出かけにくい人たちのために個別の配送や、減塩や味などを調整したリクエストに応えることもある。その細やかな気配りに、木村さんの人柄が表れている。
新規の配達申込も可能だが、曜日とルートの兼ね合いで、即日配達は難しい。配達の希望があれば、事前に電話で相談してほしいとのこと。
広島市、呉市へ航路があり、レンタサイクルの貸出・返却もできる小用港から近いため、週末や祝日になるとサイクリストの利用が増える。市外からの利用者の中には、3年ほど通い続けている方もおられると聞く。また、転勤で江田島を離れる方が、これから来られる方に、もみの木のおいしさを伝えて口コミで広がることもある。
新しいパンが生み出される、もうひとつの繋がりは、春秋の年2回、能美町中町で開催される「えたじま手づくり市」への出店だった。多くの方と知りあい、つながりの輪が広がった。地元の材料を使ったパンをさらに作れるように、そして、他のイベントへ出店する契機にもなった。
木村さんは「自分ひとりの力では、ここまでお店をやってこられなかったと思いますね。家族や親せきはもちろん、いろんな人に助けてもらったり」と、これまでの道のりを振り返る。
全てが人と人、出会いがつながって、今へと続いている――。
「遠くに出ている同級生が帰省の際に『これからも絶対、お店を続けてね!お店がなくなったら、江田島に寄るところがなくなってしまうから』と言われたことがあります。嬉しいですよね」と木村さん。
夜が明けないうちからパンを作り、朝の6時から夕方6時までが営業時間。週一日の水曜だけが定休日。今秋からはフォカッチャ、地元の栗を使った栗デニッシュと、新作開発に余念がない。出張、移動販売もこなし、市内を駆け回り、できたてのパンを届けにいく。全てはパンを待つお客さんのために。手間を惜しまない。
同級生からの励ましの言葉には、応援だけではなく、多忙な木村さんを気遣う様子も伝わってくる。
もみの木の店の前には、店名の由来である本物のもみの木が植えられている。最初は鉢植えだったのが、今では見上げるほどの高さにまで成長した。それは、子供たちのリクエストから始まった、お母さんのパン屋さんが、出張販売で完売するほどの人気店になった現在の様子に、つい重なって見えてしまうのだ。
クリスマス前にはシュトーレンも店頭に並ぶ予定。江田島にお越しの際は、また、帰郷の折には、木村さんの笑顔と、おいしいパンに会いに来てみてはいかがだろうか。
(2019年10~11月取材)
※注)2020年1月6日から、営業開始時間が朝8時からとなります。また、年末年始の営業については、2019年12月25日が休み、年内は31日まで営業します。2020年1月は、1月1日~5日までが休み、6日から営業開始です。
【店舗情報】手づくりパンの店 もみの木
住所:〒737-2121江田島市江田島町小用3丁目11-12
電話番号:(0823) 42-1985
営業時間: 6:00~18:00
定休日:毎週水曜日(その他、イベント出店時には臨時休業あり)
駐車場:無
アクセス:予約型乗合タクシーおれんじ号(路線:江田島北部線)停留所「中松田」から徒歩約3分
※おれんじ号の詳細については、江田島市ホームページをご覧ください。
おれんじ号を利用しない場合、もみの木へは、小用港から切串方面へ徒歩で10分程度。
小用港から右寄りの山手に見える、江田島市商工会を目印に、奥の道へ、右方向に進む。
国道487号線を切串方面へ。
宇根モータースの先に、停留所「中松田」が見えてくる。
東江漁協の建物を過ぎたら、あと少しだけ進むと、もみの木に到着!