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《ETAJIMA Fan Info》
大柿町大原の有限会社江能環境整備に,1969年から走り続けているバキュームカーがあります。
ベース車両は,東洋工業(現マツダ)の三輪トラック・T2000。小回りがきき,狭い路地の走行に適し,2022年現在もなお,江田島町の一部にて活躍中です。
▲月に1~2回程度の作業日以外は車庫に納められています。陽をうけて鮮やかな緑色が印象的な車体です。
▲綺麗に磨かれたヘッドライト。ボディ前面から側面にかけての損傷は,塗装で補修されています。
▲黒光りを放つ前輪ホイール。半世紀を超えた今でも現役の車,大切に乗り続けてこられた証です。
▲後方から。バケツやホース,網かごにいたるまで,掃除が行き届いていました。
▲昭和のこの時代ならでは,趣あるデザインのステアリングホイール。お洒落なカバ―付きでピカピカでした。
今までじっくりと見る機会がなかったバキュームカーでしたが,日々こんなに綺麗に整備されていることに感嘆しました。
江能環境整備のT2000バキュームカーは,現役車両かつ用務の希少さから,雑誌で紹介されたり,ミニカーにもなりました。
【雑誌での紹介】
・[内外出版社]
『高速有鉛デラックス』Vol.28 2012年8月号…「糸目姐さんのリアル失血日記」
『高速有鉛ザ・ベスト』Vol.1 はたらくじどうしゃデラックス 2018年12月臨時増刊号
※高速有鉛デラックスから作業車の記事を抜粋した特別号に再録。
・[八重洲出版]『Old-timer (オールドタイマー) 』No.121 2011年12月号…「異色車発掘紀行〈広島・岡山編〉」
『Old-timer』は隔月刊の旧車レストア(劣化した旧車を新車のように復元する)情報誌。滋味あふれるイラストで創刊号から毎号表紙を飾るのは,画家・イラストレーターの沼尻新さん。旧車が持つ魅力を,レストアの過程やオーナーに焦点を当てた誌面作りが特徴です。
(※Old-timer誌 No.121は版元在庫切れ)
【ミニカーなど製品化】※2022年10月時点で在庫無し
・[トミーテック]
トミカリミテッドヴィンテージLV-122a マツダ T2000 衛生車(江能環境整備 緑)
トミカリミテッドヴィンテージ…旧車の1/64スケールミニカーのシリーズ。2012年6月発売。
(※型番LV-122bは,T2000標準色のブルーで製品化。江能環境整備仕様でないため,社名は入っていません)
・[アシェット・コレクションズ・ジャパン]
懐かしの商用車コレクション vol.44マツダT2000(TVA8E)バキュームカー仕様
1/43スケールミニカー付の分冊百科。2022年8月発売。
自動車雑誌の老舗で知られる内外出版社,八重洲出版。江田島市のたった1台の商用車が,このように記事になっていたとは,何とも目頭が熱くなるものがあります。
また,製品化には,鉄道模型やミニカーで有名なトミーテック,テーマ別のパートワーク(分冊百科)誌を出版するアシェット・コレクションズ・ジャパンと,こちらも名門揃いです。
ここからは,懐かしの商用車コレクションと高速有鉛デラックスについて,お話します。
まずは実車の正面から。T2000は標準色の青が圧倒的に多いなかで,緑色の車体は,見た目にも存在感が大きいですね。個性的なデザインとの相乗効果で,愛嬌の良さが際立っています。
『懐かしの商用車コレクションvol.44マツダT2000(TVA8E)バキュームカー仕様』。
江田島市特産のカキやオリーブではなく,バキュームカーが全国の書店に。
バキュームカーのミニカーは,店頭,ネット市場ともに人気で,品薄状態です。
F1やル・マン出場モデルなどの製品化で,熱烈なファンの支持を集めるMINIMAX社のミニカーブランド「スパーク」が設計・開発協力を担当。模型の開発総合監修を,自動車・鉄道系イラストレータ&ライターの遠藤イヅルさんが行っています。
ミニカーのボディカラーは,実車のボンネット塗装色に近く,本物よりもやや明るい仕上がりです。
陽をうけて鮮やかな緑色が印象的な車ですので,見た感じのイメージと合うような記憶色が使われているのかもしれません。
凹凸の再現が難しいフロントグリルや開口部などは,塗装で細かく色分けされています。
ドア側面には燦然と輝く「(有)江能環境整備」の白文字!
売り切れ続出という好評をもって迎えられたことは,半世紀働き続けた功労賞と言っていいでしょう。
(※コンテンツ保護のため誌面をぼかしています)
vol.44マガジンの巻頭は「遠藤イヅルのコレクションギャラリー」。同氏によるイラストとともに,車の特徴や時代背景を解説。実用車がもつ旧車の魅力を,ミニカー,イラストに詳細な解説が楽しめる贅沢な作りです。
また,バキュームカーを配した江田島市の光景は,昭和の時代に他の地域でも活躍していただろう様子と重なり,かつての日本の原風景として,見る人に郷愁を呼び起こすのではないでしょうか。
他のページは,「街角を彩った国産車たち」「昭和・平成を駆け抜けた国産メーカー史」と,旧車の話題を中心に現行型の系譜にも触れています。
▲「街角を彩った国産車たち」から,スズキフロンテ71。昭和の頃に見かけてユニークなデザインで印象に残ったこの車。RR駆動によりエンジン後方搭載,冷却口が設けられたことなど,いま知ると首肯点頭しきりの解説でした。
続いては,今年2022年で創刊15周年を迎えた,高速有鉛デラックス誌です。
『高速有鉛デラックス』は,国産旧車が主役のマニア時代の雑誌。創刊から第6号まではフリーペーパー『高速有鉛』,現在は内外出版社から隔月で刊行。同社の空冷&水冷フォルクスワーゲン専門雑誌『Street VWs (ストリートワーゲン)』編集長でもあるフルウチサトシさんが,国産車趣味を追求するために制作したのが始まりです。
※「高速有鉛とは? 今明かされる高速有鉛の名前の由来」(月刊自家用車WEBより)
昭和の時代,車のリアウインドーにはられた有鉛ステッカーと高速有鉛ステッカーが気になっていた同好の士には,この由来を読んで「そうだったのか!」と膝を叩くこと請け合いです。
▲誌面から,旧車イベントレポートの様子。
江田島市内では見かけない,その規模と盛況ぶり,旧車が持つ圧倒的な存在感に魅了されます。
ブログ「糸目姐さんの失血日記」を運営,高速有鉛デラックス誌の名物コーナー「糸目姐さんのリアル失血日記」を担当するのは,広島県出身・在住の糸目今日子さんです。
この号では,江能環境整備仕様のT2000バキュームカーを4ページにわたって特集。小春日和の沿岸を疾走するレアなショットや流し撮り,トミーテック連動企画(Vol.28掲載時,ミニカーは開発中)の採寸シーンなど,江田島市内在住でも遭遇率の低いこの車を,多くの写真と濃密な解説で堪能できる永久保存版です。
▲隔月刊でオールカラー(一部モノクロあり)。どの記事も写真も,クルマ愛ほとばしる誌面は,とにかく情報量が半端なく多いです。他誌の追随を許さないマニア度とボリュームは,価格1,200円も納得です。
この号の「トミーテック連動企画 マツダT2000衛生車」は,糸目姐さん所有の青いT2000(ノーマル車)と並び立つ貴重なショットが冒頭を飾ります。
▲80年代のFM情報誌付録などで定番だった,懐かしいカセットレーベルも誌面の一部に。
何故カセットレーベル?と不思議に思ってたら,旧車のオーディオシステムに合わせているんですね。
実に心憎い趣向です。
▲『高速有鉛ザ・ベストVol.1 はたらくじどうしゃデラックス2018年12月号』。
過去の高速有鉛デラックス誌から,作業車の記事を抜粋,フルカラー116ページで1,500円。
取材の密度と写真の数,情報量の詰め込み度など鑑みれば,完全にサービス価格です。
▲T2000衛生車の記事は,江能環境整備編とあわせてvol.41の和歌山県鳶保清掃編も併録。
アニメや特撮ファンにはたまらない鉄板ネタ,まさかのライバル機登場の激アツ展開は心を鷲掴みにされます!
装備やカラーリング違いを掘り下げるところも,マニアのツボを知り尽くした構成です。
読みたい記事が1冊に収まった増刊号,バラエティ豊かな連載コンテンツの隔月誌ともに,それぞれの良さがあるので,江田島市にゆかりある方なら,2冊揃いは必至ですね。
時代とともに,日本各地の下水道普及・整備がすすみ,バキュームカーの活躍は激減。そんな中で,再三にわたる江能環境整備所有のT2000の紹介や製品化は,江田島市在住,出身いずれの方々にとっても,大いなる好事といえるでしょう。
また,昭和の高度成長期を支えてきた商用車が江田島市内で今も活躍し,多くの旧車ファンの方から愛されていることを,今回の取材と過去の雑誌掲載,製品化から深く知ることができました。
※江田島ファンネット記事内のT2000実車撮影と取材は,江能環境整備の方々にご協力いただきました。ありがとうございました。
(取材:2022年9月,記事作成:10月)
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【有限会社江能環境整備】
〒737-2213 江田島市大柿町大原2183-1
※iタウンページリンク
【雑誌,ミニカーなどの関連リンク】
▶アシェット・コレクションズ・ジャパン『懐かしの商用車コレクション』
▶イラストレーター 遠藤イヅル(Izuru Endo)フェイスブック
▶高速有鉛ウェブ
“マニアな国産車趣味人向けウェブサイト”の惹句通り,歴史と知識の片鱗から既に圧倒されます。スープラ,ソアラやツインカムなど,青春の一ページを彩った車名やパワーワードが出ると,その先を読まずにはいられない旧車ワールド深淵の入り口です。
▶高速有鉛StreetVWs(中の人)ツイッターアカウント
“高速有鉛デラックス編集部とStreet VWs編集部の中の人が、鉄道とワーゲンと北米仕様と旧車と鉄道とバスと鉄道の話を中心につぶやく非公式アカウント”(ツイッターアカウント紹介文より引用)です。
▶NAIGAI-SHOP(内外出版社運営の通販サイト)
※ネット書店などで在庫無しの『高速有鉛デラックス』Vol.28は,2022年10月時点でこちらに在庫があります。
▶『高速有鉛デラックス』ページ
▶トミカリミテッドヴィンテージ
▶八重洲出版オンラインショップ
『Old-timer』ページ
「異色車発掘紀行〈広島・岡山編〉」掲載のNo.121は入手不可,今回の記事で紹介できなかったのが心残りです。
古い号もいつの日か,電子書籍化されることを期待しています。