▼ニュース・イベント・お店・特産品
《ETAJIMA Fan Info》
2021年2月16日,東京のITベンチャー企業バレットグループの地方拠点となる「COCODEMO江田島ラボ」(能美市民センター別館3階)で,ひろしま県民テレビの取材が行われた。この模様は2月末に広島ホームテレビで放送。現在は広島県運営の広報サイト「ひろしま県民テレビ」で視聴できる。
リンク→ひろしま県民テレビ「オフィス出すなら中山間!?」(2021年2月28日)
▼ひろしま県民テレビ取材中のひとコマ。
写真右:バレットグループ株式会社 経営企画室室長・山本泰大(やまもとやすひろ)さん。
山本さんは地方進出時の交渉・調整を担当。その活躍から,2020年11月,「地方に拠点って必要? 地方進出する東京のITベンチャーに訊く、地方拠点の必要性と活かし方」で広島県主催のセミナーにゲスト登壇。
江田島市は,仙台,新潟に続いての地方進出となる。広島県と江田島市とが連携し,広島県が提案する「チャレンジ里山ワーク」を活用して開設に至った。
▼写真左:広島ホームテレビアナウンサーの小嶋沙耶香(こじまさやか)さん。小嶋さん自ら,ジンバル付きスマホを持ち,臨場感あふれる撮影に。
仙台,新潟に支店を置くバレットグループ。これらの市は,理工系や情報技術系の教育機関の多さから人材確保に優れ,首都圏および国内主要都市との好アクセス,企業立地助成の手厚さで注目を集めている。バレットグループ以外にも企業進出が盛んな地域だ。
江田島市初のサテライトオフィス誕生
COCODEMO江田島ラボには,東京本社の機能を一部移転するが,江田島市の場合は支店ではなく,地方拠点のサテライトオフィスである。
サテライトオフィスは「本社から離れた所に設置されたオフィス」かつ「社員の多様な働き方を実現すること」を第一の目的で,業務の円滑を主目的とした支店や支社との違いがある。
広島県では2018年12月に,人事評価サービスを提供する「株式会社あしたのチーム」(本社:東京)が,安芸高田市のサテライトオフィス誘致第1号で話題となった。
「安芸高田市にサテライトオフィス誘致決定!」(広島県「こちら広報課」より)
県は,企業からのモニターツアーなどを目的としたお試しオフィスを,新幹線駅や空港など主要交通拠点から約1時間でアクセスできる環境に(三原市,庄原市,江田島市,安芸高田市,大崎上島町,神石高原町)設置。最⻑1ヶ⽉のお試し勤務や⽣活周辺環境の視察ができる,法⼈向けのプロジェクトが前述の「チャレンジ⾥⼭ワーク」だ。
政府は,地方人口ビジョンを全国の自治体に策定させ,東京から地方へ本社機能を移転した企業の税負担を軽減する措置を拡充。各地の自治体が企業誘致を進めており,日本の人口減少問題に起因する。
2020年は,新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からも,本社機能を地方に分散する動きが加速した。だが,それより前から続けてきた誘致の取り組みが,ここ江田島市でも実を結んだ。
広島県は自動車などの製造業が古くから盛んな一方,不足するデジタル分野の拡充を図るべく「イノベーション立県」を目指している。その柱が,AI(人工知能)など最新デジタル技術の実証実験の場を提供する「ひろしまサンドボックス」で,「チャレンジ⾥⼭ワーク」も企業誘致の面から,その一端を担う。
▼COCODEMOのペイントを背景に,バレットグループ山本さんと,江田島市政策推進課・川上さん(写真右)。
※COCODEMOは,本社のある東京だけではなくココ(地方)でも働けること,バレットグループが地方の方々との関わりを作れる場所,新しいワークスタイルを創造するなど,様々な願いを込めた英単語(COmmunity 地域,COmmunication 意志疎通,DEMOnstration 証明)を組み合わせ命名しました。
[2月25日付バレットグループ株式会社プレスリリースより引用]
山本さんが江田島市に初めて視察で訪れたのは2019年12月。江田島ファンネットの「スマートかき養殖IoTプラットフォーム」取材日に,高田交流プラザにも来られていたのだとか。
江田島市の印象について「行政の方もそうですし,そこに住んでいる方のエネルギーも高かった。弊社が何か起こせるインパクトを出せるんじゃないかなという希望があった。バレットさん来てよかったね,と言ってもらえる地域に進出したかった。その意味で,江田島市はピッタリだった」と山本さん。
当初,地方拠点の候補には沖縄や京都などがワーケーションの場所の検討対象だったが,縁あって広島県の中山間地域担当の方からの紹介で,広島が候補地に加わった。そして実際の視察のときに,県内のお試しオフィスを回るなかで,江田島市に決めた理由のひとつが「人の厚さ」と語る山本さん。
「江田島市役所の川上さんを始め,フウドの後藤さんや,移住者の先輩の方たちもですね。江田島市で何かをやろうとしたときに皆さんが,多くの選択肢やアイデアをくださり,親身になっていただいた」とのこと。
3つのキーワード
COCODEMO江田島ラボ開設には,エンジニアの採用拠点,ワーケーション,CSR(Corporate Social Responsibility),3つのキーワードがあると語る山本さん。これらについて,説明いただいた。
山本「エンジニアの採用拠点ですが,東京でも今は厳しくて。エンジニアは,他の企業に大量採用されたりとかしますが,まだ地方には人材が集まっていると。それと地方で働くと,給料もそれなりになりますよね。うちは東京と同じ金額で働けますので。それが1番目のキーワードですね」
プログラミング教室と,ITリテラシー向上の先にある,江田島市の未来像
ラボの本格始動に先がけて昨年11月には,地元の小学生を対象としたプログラミング教室を開催したバレットグループ。呉市や広島市などの近隣の市では,既に学習の場としてプログラミングスクールが存在するが,江田島市では初の,本格的な待望の教室となった。
(記事掲載:広報えたじま第196号)
江田島ラボでの活動内容のひとつには「IT教育プロジェクト」があり,社会人や小中高生を対象としたIT教育やプログラミングイベントの開催が予定されている。ITに興味を持つ子供たちを育成する,未来を見据えた取り組みとし,ゆくゆくは「バレットで働きたい」と思ってもらえる,企業としての成長も射程に入る。
――江田島市において,ITリテラシー(ITに対する理解度)を向上させていくためには,プログラミング講座のように小さい年代から身につけることによる地力アップ,底上げが重要で,そこを中心として,考えていらっしゃいますでしょうか。
山本「そうですね。ただ,今の島の暮らしで不自由なところを,ITで解決できる部分はしていきたいなと思いますね。だから,下からだけではなく,上からも横からも進めていきたいなと考えています」
――多角的な方向で,ということですね。
山本「ITって,いろんなところからアプローチできるんで。こんなところもITが活躍できるんだ,みたいなところがあると思うんです」
――現在では若い年齢から,日常的にスマホやパソコンでIT自体には慣れ親しんではいる状況です。しかしながら,プログラミングという選択肢にまではたどりつかない。そういう状況があるように思われますでしょうか。
山本「そうですね。今の子供たちって,教えれば,やると思うんですよ。知らないだけだと思うんですよね。そこをバレットが,お手伝いできればと。特に江田島市だと,結構高齢化が進んでいたりとかあるので。そこをITで底上げできればなと。おじいじゃん,おばあちゃんでも,ITに強くなることは可能だと思うんですよ」
――例えば,簡単な機器から始められる,というような?
山本「そうですそうです。こんな便利になるんだと,思ってもらえれば。わたしたちには関係ないっていうところも,関係あるようにしていければなと」
地元でIT企業に就職できる
――江田島市には,今までIT系の企業がありませんでした。広島市や呉市など島の外へ行かないといけない。また,理工系の学校もありません。地元でバレットのようなIT企業ができるということで,みんなに関心をもっていただき,そして,バレットにすぐ採用ということに結びつかないかもしれないけど,外で学んできて,また再び江田島市で働こうということが可能になる。そういう選択肢が増える可能性もありますでしょうか。
山本「そうですね。そういうことも,やっていきたいとは思いますね」
――江田島市には唯一の高校,大柿高校があります。そこでもし,こういった講座を開くことがあれば,技術を教えていくというような感じでしょうか。
山本「地方創生の部分でいうと,大柿高校でプログラミングスクールができたらいいですね。そこで優秀な子たちが採用に至ったりとか,それができれば最高ですね。興味がある子たちとか。
その子たちが,講座によって,プログラミングに興味を持ってもらうきっかけになるかもしれない。
例えば,広島市内の専門学校に入学したけど,2年で江田島市に帰ってきて,バレットに就職したとか。そういうこともあるかなと思いますし。または東京で修行したりとかもありえますし。東京に出て,帰ってきてからの就職はバレットで,なんてこともいいかなと思いますね。そういう学び方,働き方もいいかなと思っています」
――近いところ,地元で就職することが可能になる,ということですね。
――3つめのキーワード,CSR(Corporate Social Responsibility)について伺います。企業の社会的責任に注力されているということですが,企業=バレットが社会貢献をされていらっしゃると。その中に雇用の創出ですとか,地方創生で,地方に貢献できると。そう考えてよろしいでしょうか。
山本「そうですね」
――江田島市にはこれまでなかなか新しい企業の進出がありませんでした。その意味でも,今回の新拠点設立については,さまざまな点で,大きな期待が寄せられていると思います。
COCODEMO江田島ラボの業務のひとつ「アドテクノロジー基盤の研究開発」について
――業務のなかのひとつ「アドテクノロジー基盤の研究開発」について伺います。これは,どのようなものになるのでしょうか。
山本「広告系ですね。ネット広告がメインとなっています。うちが主にやっているのが,インターネットマーケティングです。ASP=アフィリエイトサービスプロバイダと言われるものです。
どういうものかといえば,例えば,ペンを売りたいっていうクライアント(ここでは広告主の意)さんと,その記事(売るための文章)を書くアフィリエイターさんをつなぐっていうのが,ASPっていうシステムなんです。
例えば,このペンの記事を書きました。それをブログにアップしました――。
そしたら,その記事を見て,買った人がいたら,この人に広告主からはお金を払わないといけないですよね。
それが,「うちのブログを見ました」っていう印を付けないといけないんですけど。その印を付けるシステムがASPなんです。
このサイトから1本買われましたよ。このサイト経由で,この広告を見て買われましたよ,と。
ブログって個人のものだったりするんですけど,実は広告として有効だったりとか。
インスタグラムとか,フェイスブックとか,広告が入っているじゃないですか。あの広告を書いてたりするのが,アフィリエイターなんですよね。 で,そこで例えば,お客さんがその広告経由で買いました。売価が1000円だったとしたら,うちは10%=100円を,このASPの通過料として払ってます。
で,この人たちからのメリットからすると,いちいちタグをつけたりとかするのに,すごいお金がかかったりとかするんだけど,うちに100円払うだけでそれが全部やってくれて,クライアントに100円を請求してくれるんですよ(ASPのシステムで)。これが非常に楽だということで,うちが使われていると。
また,バレットではASPでどういう広告がウケるのかというノウハウを手に入れることができるので。次,クライアントさんに「こういうものを要りませんか?」という提案もできるというところもあるので。これがASPの流れの仕組みですね。
うちでは,記事を書く部隊も専門で持ってたりとかするので。もちろん,外部に出すというところもありますし。例えば鉛筆だったら,鉛筆が売れるのはLINEなのかフェイスブックなのか,インスタグラムなのかというのをこちらで判断して,クライアントさんに提案すると。
枠を固定した従来型の広告だと,売りあげに別に効果があってもなくても,決まった金額を払わないといけないんですけど。売れるまではうちは,成果報酬型なので払わなくていい。というのもメリットとしてあるんですね」
――技術的な内容としては,どのようなものになるのでしょうか。
山本「計測をするタグで,広告を見た人の情報を分析していきます」
――そういった分析をして,フィードバックするということなんですね。今,まだ,エンジニアの人材を募集しておられるということですが,そのような技術を持つ方を即戦力として求めていると。
山本「ですね。開発エンジニア,フロントエンジニア,インフラエンジニアと」
――ということは(求める職種が広いので),江田島市内だけでなく,近隣(呉市や広島市など)の方も募集の対象であるということでしょうか。
山本「そうですそうです」
――最終的には10人ぐらい,10人よりももっと,とか?
山本「10人とか,まあ,30人とか40人とか,集められれば最高ですね」
【補足説明】アドテクノロジーとは,ネット広告を支えるサーバー構築やプログラミング,大量のデータを扱うための通信環境整備など含めた全般の技術を指す。
ホームページや動画サイトを見ていると,自分が過去に検索した商品の広告や,関連した他の商品が画面に差し込まれることがある。これは,アドテクノロジーの一端だ。
ネット広告には,固定の期間や金額でウェブサイトにバナーやテキストの広告を出す「純広告」や,広告額や入札額に加えてターゲットなどの付随パラメータを変動させながら出稿する「運用型広告」などの種類がある。
バレットグループの自社開発プラットフォーム「SLVRbullet(シルバーバレット)」は成果報酬型広告に分類される。最初から金額を設定した一般的な広告と異なり,広告主(クライアント)が設定する成果に対して,出来高で広告費が発生する。
広告を既存のページにはさみこみ,閲覧者に適した広告を表示する全体的なシステムは,ASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)といわれる。個人がインターネットを利用するには各事業者が提供するプロバイダと契約するが,これに似ていて, 広告主はASPを提供する企業へ,ネット広告を依頼する。
営業経験を経ての転職,40歳でバレットに入社
――ところで山本様は,もともとは理工系などの大学で勉強をされておられたのでしょうか。
山本「あ,ぼくは全然です。新卒でスターバックスに入って,そのあとリクルートで営業を経験して。そこからウエディングのベンチャーに行って。で,この40歳,2年前にバレットに入社しました」
――では,現在は統轄的な業務をされておられるということでしょうか。
山本「そうですね。経営企画という形で,やっているというところです」
――バレットとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。
山本「役員の方とお知り合いになるきっかけがあって。そこで出会ってからですね」
――前職の経験が今の現場に役立っているとか,そういうことはありますか?
山本「やっぱり,コミュニケーションというところと。交渉力とか社内営業。あとは,こういった外部の方とのコミュニケーションですね」
――いまこうして,江田島を選んでいただいたのも,人の厚さとおっしゃっていました。結局は,人の縁であったりとか,人の厚さ,人の温もり。そういうところに行き着くというふうに,考えておられますでしょうか。
山本「バレットグループのポリシーが『人とテクノロジーで世界をつなぐ』というところがあるので。これがもちろん,私たちのミッションだと思ってやっていますし。そして『人を育てられる人を育てる』というのが大事,というのがあるので。どんどん,いけてる会社の社長はみんなバレット出身みたいな形の,世界観を目指している,ということです」
――技術は進化しても,結局,そこで大切なのは人と人とのつながりがあって,それが幸せにしていくと言いますか。それらが結果として,いろんなところで花が開いていくような感じでしょうか。
山本「そうですそうです」
社会貢献と結びついた地元採用とリモートワークについて
――江田島ファンネットでは,東京をはじめとする都市部に在住の方向けに,今の江田島市の情報を発信しております。そこで,今回の取材の結びとしまして,今現在,いろいろと日本各地,東京のほうも,コロナの影響で大変であると思うのですが,そういった方々に向けての“思い”といいますか,何が意気込みなどがありましたら,お話しいただけますでしょうか。
山本「これからたぶん,リモートワークというところが主軸となってくると思うので,うちはその先進企業として,しっかりと(リモートの形に勤務を)移っていただいています。IT企業でありながらも,そういう支援やサービスというところに力を入れていくことによって,自分の会社が社会貢献ができるということがあると思うので。そういう会社で働くことによって,社会に貢献できるということが可能です。
こういう環境があるところ,環境がいいとことで,自分でかなえられる夢を実現したいのであれば,ぜひぜひ,うちに,ご応募ください」
――わかりました。本日は取材にて,貴重なお話をいただきまして,ありがとうございました。
▼ COCODEMO江田島ラボの様子。能美市民センターの一室をリフォームしているとは思えない,まるで都会のおしゃれなカフェのような,洗練された雰囲気と開放感が心地良い。
▼「壊すべき壁を撃ち抜く 人とテクノロジーで世界をつなぐ」“業界の慣習や古いしがらみにとらわれず,壊すべき壁を撃ち抜く”……バレットグループという社名には「バレット(弾丸)で,目の前に立ちはだかる色々な壁を撃ち抜いていく」ベンチャーとしてのチャレンジ精神と「自ら手をあげてくれた人に新しい領域を任せ,どんどんグループを大きくしていきたい」という未来への希望を込めています。
(バレットグループ会社概要パンフレットより引用)
COCODEMO江田島ラボの,これからの活躍に目が離せない。
▲デスクの前に広がる海と空。ワーケーションにふさわしい環境となった。
「このロケーションってたぶん,来た人しかわからないと思うんですけど。感動したので。ここはいけると思ったのと,うちの社員にここを見せてあげたいと」と山本さん。“IT企業はコロナの影響もあって,リモートでどこでも仕事ができるというのはあるが,やはり働く環境を選べるのは非常にいいと思う。エンジニアは居住空間や定住環境にこだわりがある方が多いが,ここだと自然に囲まれ,子育てもできてビーチもあり,レジャーもできる。レモンにカキ,農産物もあって,海とオリーブとか農作物などのコラボレーション。資源が潤沢なところ”と,江田島市の魅力を語っていただいた。
(記事作成:2021年3月)
++++++++++++++++++++++++++++++++
【所在地情報】
名称:バレットグループ広島オフィス COCODEMO(ココデモ)江田島ラボ
拠点開設日:2021年3月17日
所在地:広島県江田島市能美町中町4859-9 能美市民センター別館3F
バレットグループ株式会社コーポレートサイト:https://bltinc.co.jp/
リクルートサイト:https://bltinc.co.jp/recruit/
【広島県,江田島市の企業誘致に関連した各種優遇・助成など】※2021年3月現在
(広島県) ・企業のための広島県ガイド
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kigyourittiguide/
・チャレンジ里山ワーク…
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/challenge-satoyama/
(江田島市)・江田島市企業立地奨励制度について…
https://www.city.etajima.hiroshima.jp/cms/articles/show/3559
・サテライトオフィス誘致促進事業…
https://www.city.etajima.hiroshima.jp/cms/articles/show/6788