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《ETAJIMA Fan Info》
前回記事はこちら→「江田島町中央 小松商店(前編)~サンドイッチ作りから始まる早朝~」
今回記事の後編では,小松商店の歴史を辿ります。
江田島町中央にある,小松商店。
開業は昭和10年代で,当時は駄菓子や,自家製の饅頭などを売っていたそうです。お祝い事の鯛菓子や,法事の蒸し饅頭も作っていました。
現在のように,パンを取り扱うようになったのは,
小松「ヤマザキパンが広島のほうに来だして,昭和50年に,私と母とでやるようになりました。後で,姉が横須賀から帰ってきて,一緒にね」
あんぱん,メロンパンなどのロングセラーから,ニューフェイスのコンソメパンまで,豊富な品揃えです。
ヤマザキパンから手作りサンドイッチの提案があったのは昭和55,6年のこと。以来ずっと,サンドイッチを作り続けています。店の看板にある「ヤマザキYショップ」は,ヤマザキ販売店の中でも小規模店を中心に,運営をサポートする新業態として,1982年に開発されました。店内厨房で手作りサンドイッチや揚げ物などを提供するシステムもあり,小松商店では手作りサンドイッチに特化して,お店の名物となっています。
小松「長いこと,やってます。もう2人とも年を取ってしまって(笑)」
手作りサンドイッチに欠かせない,新鮮な食パン。実はサンドイッチ用だけでなく,店内で切りたてを買うこともできるんです。新しいブロック食パンを包みから開き,パンスライサーにかける君枝さん。手早いだけでなく,正確,丁寧な仕事ぶりです。
小松「「何枚で切ってください」言うたら,こうして切ってあげるんよ」
あらかじめ決まった枚数と厚みで袋詰めされた包装を,日頃見慣れていると,その場で必要な量だけこうして切ってもらえること自体,ありがたいことだと思いました。
小松「朝食のパンの配達は青木病院へ,食パンとバターロールをかわるがわるで,ずっとやっていますね。海のガーデンは,日曜日の朝だけ朝食の分に,サンドイッチを持っていってます」
店舗の周辺は,現在に至るまでに,大きく様変わりしました。
山田バス停そばの青木病院は2022年3月に大幅改装。すぐ近くのサービス付き高齢者向け住宅「海のガーデン」は2014年に建ちました。江田島中学校は2008年,3キロ弱離れた小用小学校跡地へ移りました。
小松「人は減りました。第一ここらは,若い者がおらん。昔は小学校と中学校が近くにあって。中学は土曜日の昼は弁当がないから,よく買いに来よったよね。
今は,みんなお客さんも,年寄り。じゃけん,少なくなってね」
▲信号機そばの江田島保育園は,最寄りの認定こども園えたじまへ移転統合。
山田バス停には,色褪せた古いベンチが,当時の姿のまま設置されています。
小松商店では,なかなかお店へ来られない方にも,車で配達に出かけています。
小松「一般の家庭に,毎週何軒か,姉が行くんです。週2回で,何と何がいる言うたら,持っていく。
昔は,牡蠣の加工場にも持っていったけど。打ち子さんが外国人になってきたら,パン買わなくなったんよ。
だから牡蠣のほうは辞めたんです。今は宮ノ原の住宅や,小用は家へ一軒一軒ですね」
配達は,昼の3時過ぎに出て,5時頃に帰ってきます。食パンや牛乳など,日持ちのする商品の希望が多いそうです。配達先の方々も小松さんと同じく,高齢の方が多いとのこと。お互いに助け合っているご苦労を思うと,ただただ頭が下がるばかりです。
江田島市外からはサイクリングや釣りで来る方も多いのですが,小松商店ではどうなのでしょう。
小松「この間,自転車で広島から来た男の人がね,サンドイッチ買うていって。また次に来た時も,買ってくれました。「美味しかったけえ寄りました」言うてね。嬉しいよね。またそりゃ,ありがとうございます言うたんじゃがね。ああいうことがあったわ」
食品を提供する店舗数もその種類も,広島市内は江田島とは比較にならないほど多いはず。それでも市外から来られた方が,サンドイッチで小松商店を再訪したのは,おいしさの証と言えるでしょう。
ところで,もしお店に,車で来られた場合,駐車場はあるのでしょうか。
小松「無いんですが,外の通路のところよね。あそこなら停めてもいいですよ」
※配達車の後方と電柱の間に,軽自動車1台程度なら停められる幅のスペースがあります。
ヤマザキYショップでは,サンドイッチなどの店内調理品や,ヤマザキパンの他に,オリジナル商品も見逃せません。入荷すると早々に売りきれる人気商品,ヤマザキオリジナルの豆大福が,取材日にレジ横に並びました!
「特撰 豆いっぱい大福 十勝産小豆の粒餡」(150円)。薄皮餅に入った粒餡が,ずっしり。
十勝産ならではのおいしさ,お手頃価格と食べ応えで,非常にお得感のある和菓子です。
コンビニエンスストアのデイリーヤマザキとは,名前が違う「ヤマザキYショップ」。
2022年12月時点,江田島市内で,ヤマザキYショップは小松商店1軒だけです。
山崎製パンWEBサイトの「企業情報・沿革」によると,広島工場竣工稼働は昭和48年(1973年)2月。
各地で既に生産が始まっていた関東,関西の他県と比べると,広島は,やや遅れてのスタートだったようです。
この広島工場稼働の2年後,小松商店はヤマザキパンの取扱を開始。その後,昭和55,6年に,サンドイッチ作りが始まりました。そして40年以上も続く,お店の名物となっています。
手作りサンドイッチの他に,ヤマザキオリジナルには,季節ごとの商品や珍しいドリンクなどもあります。
取材に訪れた11月,ショーウインドーや天井には,クリスマスに向けての飾りつけがされていました。
小松「(季節の予約商品は)巻寿司,おひなさまのケーキ,男の子の節句。夏はウナギ,そしてクリスマスですね」
日々の仕事に,年中キャンペーンが入ると,二人だけではかなり忙しいのでは。ヤマザキのクリスマスケーキはよく知られていますが,うなぎまであるとは……。
小松「もう大変です。みんなに声かけるようになるよね」
季節イベント商品には,ケーキのほかにも恵方巻や,うな重など,ご飯ものもラインナップ。中でもうな重は,鹿児島県産うなぎ使用で二千円から三千円台と,お求めやすい価格も魅力です。
他にもヤマザキオリジナルで,ドリンク類も個性的な味が揃っていました。
飲料の冷蔵ケースには,カフェオレからキリマンジャロまで種類豊富な炭焼コーヒー,Yamazaki×チロルチョコ㈱監修チョコレートドリンク,ミルクセーキ,梅ソーダ,桃のドリンク。他店ではあまり見かけない選定が通好みです。桃ジュースは不二家のネクターより果汁の割合が多い35%と,果実感アップで楽しめます。
そして,真打ち登場,ヤマザキパンについてご紹介。
棚の全てがヤマザキパン。パン好きにはたまらない,至福の眺めです。
ずっしりデニッシュ,コッペパンなどのロングセラー商品から,こんがりチーズマヨパンやデニッシュリングドーナツなどの新製品も,しっかり入荷しています。
新製品の仕入れは千鶴子さんが決めているのだそうです。売れ筋商品中心の品揃えが多い大型店では見かけない,しかもおいしそうなパンばかりを選りすぐりで置いている,そんな印象があります。
小松「仕入れようと思ったらすごい種類があってね,その中から選んでいくんよ」
こちらの写真左側は,“ちょっと珍しい海外初のおいしさをヤマザキパンがイメージして作った「セカパン」”シリーズの新製品,イギリスのアップルクランブルパン。(セカパンは11月30日までの限定販売)
日々生活するのに十分な,日用品から食料品まで,よく使う,売れ筋商品を中心に置いています。
店内を回ってみると,外観からは想像がつかないほどの品数があり,まるでスーパーのようです。
取材の間にも,電話で取り置きや配達の連絡が入ってきます。そして,入れ代わり立ち代わりでお客さんが訪れ,話し声が尽きません。
みんみんラーメン,ガリバタ(ガーリックバター)と,食欲をそそるカップ麺に遭遇!
一平ちゃんと日清焼きそば袋パックの定番にはさまれて,ぶぶか油そばや家系MAXが。
万人向けの定番と,マニア向けの商品をバランスよく取り揃えています。
つい手に取りたくなる,おいしそうな季節限定品も入荷していました。
両親から引き継いだ小松商店。開業の昭和10年代といえば,日本はまだ戦時中でした。
この江田島とともに,小松さんご家族も,激動の世の中を生き抜いてきたことでしょう。
40年以上続けている,手作りサンドイッチ――。
ひとつのことを長年,変わらず続けることは,決して容易ではありません。
店を継ぎ,人生の大半を,仕事のために捧げなくてはならないのです。
おいしい,と食べてくれる誰かのために,新鮮な材料で,安心安全なものを地元から。
年中無休で,一日も欠かさず作り続けるその気概と姿勢に,ただただ感服です。
店主の君枝さんは79歳,千鶴子さんは82歳です(※取材時点)。
取材中に「何年できるかなあ思いながら,やってますけどね」と千鶴子さんが話されたときには,今までのご苦労を想像すると,何と答えていいのか……。かける言葉が見つかりませんでした。
しかしながら,実際に,朝入荷したパンを検品して並べたり,サンドイッチを調理する姿や,パンをスライスする様子を目の当たりにして,そのはつらつとした仕事ぶりは年齢を感じさせる不安など無く,それどころか大いに元気をいただきました。
おふたりとも熟練の職人,生涯現役といった言葉でしか,表現できませんでした。
いつかお店に寄られたサイクリストの方のように,「おいしかったけえ,また食べにきました」と。
いつでも思いたったら,もちろん一見さんでも,気後れすることなく。
みなさんもぜひ,小松商店へ訪れてみてください。
(取材:2022年11月,記事作成:2022年12月)
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【店舗情報】
小松商店(ヤマザキYショップ)
住所:〒737-2122 江田島市江田島町中央5丁目1−2
営業時間:午前6時~午後6時
年中無休
山田バス停のベンチと同じく,昭和の時代から存在する,集約灯器の信号機。
テレビなどでは通称「UFO信号機」と呼ばれ,現在は老朽化に伴うLEDの信号機に入れ替えが進んでいるため,全国的にも希少な種類となっています。
広島県ではこの山田だけにあります。小松商店に来られる際には,この信号を目印にお越しください。